研究
2023.11.08
Craif 技術顧問・共同創業者 安井隆雄の卵巣がんに関する研究成果が「Nature Communications」に公表されました
Craif株式会社(所在地:東京都文京区、CEO:小野瀨 隆一、以下Craif)の技術顧問・共同創業者である安井隆雄(東京工業大学 生命理工学院 教授)と名古屋大学医学部附属病院 産科婦人科 横井暁 病院講師らが研究責任者として共同で行った「セルロースナノファイバーシートを用いた空間的エクソソーム解析」に関する研究成果が2023年11月8日付の科学雑誌「Nature Communications」に掲載されました。
本研究プロジェクトでは、ごくわずかな体液からエクソソームを含む細胞外小胞(Extracellular vesicles:以下、EV)を捕捉・保存するための「EVシート」を開発しました。新素材セルロースナノファイバーが吸水性や乾燥によって閉孔する特性を生かすことで、極めて微量な体液からEVを効率よく回収・保存することができるのがEVシートの特徴です。EVシートを湿らせた臓器に貼り付けることで、微量の腹水からEVを回収し、small RNA解析を行うことに成功しました。EVシートを卵巣がんモデルマウスに用いたところ、マウスに明らかな腹水がないごく初期のがんの段階から、がんに関連するmiRNAの検出が可能であること、また、異なる場所からのEVが固有のmiRNAプロファイルを持つことが実証されました。卵巣がん患者にも、各組織にEVシートを用いた空間的エクソソーム解析技術を適用することで、がんの局在性や腹腔内転移の有無等の情報が得られる可能性が見出されました。EVシートはがん患者の腹水EVを臓器の様々な場所ごとに詳細に分析することを可能にし、より精密ながんの診断、病期評価、治療計画策定に貢献することが期待されます。
【本研究のポイント】
・エクソソームを含む細胞外小胞(EV)には、がんや病気に関連するバイオマーカーが含まれており、病態の評価への利用可能性が期待されている。
・EVは様々な体液に含まれているが、体液からEVを取り出して解析を行うには、従来の手法では一定以上の量の体液が必要であった。
・ごくわずかな体液からEVを捕捉・保存することができるセルロースナノファイバーを用いた「EVシート」を開発した。EVシートを臓器に貼り付けるだけで、微量の腹水からEVを回収することが可能になった。
・卵巣がんモデルマウスにおいてEVシートを利用することで、ごく初期のがんマーカーを臓器から直接検出することに成功した。
・卵巣がん患者にもEVシートを用いた空間的エクソソーム解析を実施し、腹水EVが場所に依存した固有のプロファイルを示すことを明らかにした。空間的なEVのプロファイリングから、がんの局在性や、腹腔内転移の有無に関する情報が得られることが示唆された。
【論文情報】
雑誌名:Nature Communications
論文タイトル:Spatial exosome analysis using cellulose nanofiber sheets reveals the location heterogeneity of extracellular vesicles
DOI: 10.1038/s41467-023-42593-9
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